「知新(ハウステンボス環境研究会発行)vol.7,2001.1」掲載

水システム小委員会

圧送式排水システムにおける建物用途別での排水量に関する調査・解析結果報告

須賀工業株式会社
井手直秀、竹田喜一、稲田朝夫、中村勉

概要:循環型水利用システムに採用されている圧送式排水システムに関して、ポンプの運転情報を基にしたポンプの稼働率や排水負荷推定法とその妥当性を示し、さらに実態調査より得られた各ポンプの運転履歴データから、建物用途ごとに求めた時刻別排水負荷などについて報告し、負荷変動に与えている気象の影響などについても考察を行った。

はじめに

本報では、排水ポンプ(GP)を利用した圧送式排水システムでの実態調査結果に基づき、建物用途別でのポンプ稼働率や時刻別での排水負荷などに関して解析を行ったので、以下に報告する。 (調査期間:平成9年8月11日(月)〜8月16日(土)の6日間)

1. 圧送式下水道の運転状況

1.1 運転時間

当施設の圧送式下水道システムにおいて、各排水槽に設置された排水ポンプの日平均運転時間を図-1に示す。


図-1 排水ポンプの運転状況

排水ポンプの運転時間は、約5割程度のポンプが30分未満の運転となっている。特徴としては、建物の主用途(排水槽に接続される排水系統の主たる用途)がホテル、飲食店、公衆便所である排水槽の運転時間が、他に比べて比較的長い値を示す傾向が見られる。

1.2 最大同時運転台数

比較的運転時間の長い、ホテル、飲食店、公衆便所に設置された排水槽について、排水ポンプの最大同時運転台数を調べた結果を表-1に示す。同一用途のみを対象とした場合の最大同時運転台数は、飲食店、公衆便所、ホテルの順で多くなり、最大6割程度のポンプが同時運転している日があり、文献に示されている最大同時運転台数よりも大きな値となっている。また、ホテルのみを対象とした場合は、調査日によるバラツキが他の建物用途より大きく見られる。

表-1 最大同時運転台数
用途種別台数*1文献資料*2より
求まる運転台数
同時運転台数の実測値と、その発生回数及び時間
調査日同時運転台数同左発生回数同左発生時間
ホテル17台4台8/118台1回2分
8/1210台1回2分
8/138台1回1分
8/149台2回8分
8/158台1回1分
8/166台4回9分
飲食店23台5台8/117台6回8分
8/127台3回3分
8/138台1回1分
8/148台1回2分
8/158台1回1分
8/168台1回1分
公衆便所18台4台8/119台1回1分
8/128台1回1分
8/138台3回3分
8/149台1回1分
8/158台1回1分
8/168台3回6分
上記合計58台7台8/1115台1回1分
8/1213台1回3分
8/1315台1回1分
8/1414台2回2分
8/1516台1回1分
8/1615台2回2分
*1自動交互運転ポンプ1セットにつき1台とする
*2柏谷衛:圧力式下水道システム,鹿島出版社,(1988)

次に、建物用途別に1時間毎の各ポンプ稼働率を平均したものと、その時の対象ポンプ全体に占める最大同時運転台数の割合を示したものを図-2に示す。ポンプ稼働率の平均値が高くなれば、最大同時運転台数も高くなり、ホテル系統ではポンプ稼働率の平均値が20%を超える時間帯が多く見られる。このように、ホテル系統については、特定の時間帯にポンプの運転が集中していると推定され、このことが他の建物用途に比べ最大同時運転台数を多く示す要因と考えられる。


図-2 用途別ポンプ稼動率と最大同時運転台数

また、同様にホテル、飲食店、公衆便所の全体で示したものを図-3に示す。種々の建物用途を含むことで特定の時間帯にポンプの運転が集中するようなことがなく、ポンプ稼働率の平均値は全時間帯で15%以下となり、その結果として最大同時運転台数は低くなる。さらに、対象とするポンプの台数が多くなるため、バラツキが小さくなり、各ポンプ稼働率の平均値に対する最大ポンプ運転台数の比例関係がより明確に現れている。


図-3 ポンプ稼働率と最大同時運転台数

2.排水負荷予測

2.1 排水負荷推定方法

排水ポンプの吐出流量は一定であると仮定し、各排水槽に流入する排水量を排水ポンプの吐出流量にポンプ運転時間を乗じることにより、日排水量を推定した。

また、時間帯別の排水負荷を表-2に示す方法で推定した。

表-2 排水負荷推定方法
排水ポンプ停止時間帯
1.ポンプ吐出量と、排水ポンプの最小運転時間より、排水槽の有効容量を推定する
2.ポンプ停止後より再運転までの間に排水槽有効容量と同量の排水負荷が生じたものと仮定する
3.排水槽有効容量をポンプ停止時間間隔で平均化し、この間の排水負荷とする
排水ポンプ運転時
1.ポンプ運転時間と最小運転時間の差を求める
2.この差にポンプ吐出量を乗じたものをポンプ運転中の排水負荷と仮定する
3.ここで求めた負荷をポンプ運転時間で割りこの間排水負荷とする

以上の推定方法により、調査期間における最初のポンプ運転時間帯より、最終運転時間帯まで各時刻(1分ごと)における排水負荷を推定し、各日の同一時刻での排水負荷を平均し、時間帯ごとの負荷率を算出した。

なお、今回示した推定方法の妥当性を検証するため、当施設の圧送式排水システムにおける全排水槽について、1時間毎の排水量を推定し、その結果を合計したものと、圧送式排水システムの最下流部における測定値を比較したものを図-4に示す。

多少の差異は見られるが、傾向はほぼ等しく、推定方法としては妥当であると判断される。


図-4 推定値と測定値の比較(8月11日)

2.2 推定結果

(1) ホテル

ホテルに設置された排水槽のうち、客室系統の排水のみが流入する排水槽について、時間帯ごとの負荷率を推定した結果を図-5に示す。該当する排水槽4箇所共に、同様の負荷変動を示している。負荷変動の特徴としては、22時台と前後1時間に負荷が集中しており、日排水量の約4割がこの時間帯に発生している。その他の時間帯としては、朝の7時台〜10時台に約2割が、日中から夜のピークまでの間に残りの約2割が発生している。このように、施設内で行われる各種イベントが終了する21時以降に負荷が集中しており、一般的なホテルに比べ夜間の短時間に負荷が集中する傾向が顕著に見られる。


図-5 客室系統の時間帯別負荷率

この4箇所の排水槽のうち、接続される客室数が確認できたAホテルの排水槽系統について、客室1室当たりの日平均排水量を推定した結果を表-3に示す。

表-3 客室1室当たりの日平均排水量
ホテル名Aホテル一室当たりの日平均排水量461 l/日・室
系統名排水槽(4)
日平均排水量26.6t内訳11日12日13日14日15日16日客席数58室
24.327.627.927.026.426.4
 0時1時2時3時4時5時6時7時8時9時10時11時
負荷率*1%3.51.81.21.21.31.52.45.86.34.63.62.7
時刻別排水負荷量t/h0.930.480.320.320.350.400.641.541.681.220.960.72
l/h・室1686667112729211712
 12時13時14時15時16時17時18時19時20時21時22時23時
負荷率%2.11.81.92.22.72.83.03.03.810.618.511.7
時刻別排水負荷量t/h0.560.480.510.590.720.740.800.801.012.824.923.11
l/h・室1089101213141417498554
*1負荷率は、客室単独系統における負荷率を平均した値を採用している

このように1室当たりの日平均排水量は461l/日・室となり、1室定員が2〜4人であると仮定すると1日1人当たりの使用水量は、客室の使用率を考慮しても200l/日・人以下と考えられ、文献に示されている日使用水量に比べ低めの値となっている。

(2) 公衆便所

当施設内に設置された排水槽のうち、客用公衆便所系統の排水が主に流入する排水槽における日排水量を表-4に示す。

表-4 公衆便所系統の日排水量
系統名日排水量[t]設置器具
11日12日13日14日15日16日平均値大便器小便器洗面器
T-114.214.417.220.023.431.820.2525
T-222.518.033.031.831.535.128.7525
T-325.523.133.043.138.953.036.1525
T-415.614.717.725.525.529.721.5525
T-56.98.49.911.412.013.810.4525
T-611.811.614.420.821.625.417.6525

公衆便所系統の日排水量は調査日による変動が非常に大きく、週初めの11日、12日に比べ週末になるにしたがって日排水量が増加している。これは、表-5に示すように週前半は天候が悪く、また16日は特別なイベントが開催されていたためと推定される。

表-5 調査期間中の気象データ
 11日12日13日14日15日16日備考
天候大雨一時一時 
日雨量 mm37.5230.00.51.0-- 
外気温 ℃25.725.126.927.228.028.2平均
27.928.329.930.832.631.2最高
23.923.624.324.325.826.0最低
日照時間 h-0.44.62.710.211.9 

このように公衆便所系統の日排水量は、天候や開催イベントの内容が日排水量に大きく影響し、設置器具数による明確な傾向は今回のデータのみでは判断できない。

次に、時間帯ごとの負荷率を推定した結果を図-6に示す。出入り口近くに設置されている排水槽(T-5,T-6)を除きほぼ同様の傾向であり、日中の12時〜16時にかけてピーク負荷を示し、特定の時間に負荷が集中するような傾向は見られない。出入り口近くに設置されている排水槽(T-5,T-6)で、施設営業終了時間帯に負荷が多くなる傾向が見られ、入口から最も近くにあるアトラクションに併設された排水槽(T-5)では、午前中にピークが発生している。


図-6 公衆便所系統の時間帯別負荷率

(3) 飲食店

当施設内に設置された排水槽のうち、レストラン系統の排水が主に流入する排水槽における日排水量とレストランの席数の関係を表-6に示す。1席当たりの排水量は、飲食店の種類により50l/席〜350l/席とバラツキが見られる。

表-6 飲食店系統の日排水量
用途系統客席数日最大排水量
t/日
1席当りの排水量
l/席
INOUT合計
カフェテリアR-119601969.448
バーガーハウスR-266208611.9138
和食レストランR-38108128.8356
カフェ、レストランR-4760769.0118
洋食レストランR-5100010024.2242
カフェテリアR-6194019415.479

次に、時間帯ごとの負荷率を推定した結果を図-7に示す。負荷率についてもレストランによって異なる傾向が見られ、特に和食レストランとバーガーハウスでは、朝と夜の特定時間帯に負荷が集中する傾向が見られる。


図-7 飲食店系統の時間帯別負荷率

3.まとめと今後の課題

当施設の圧送式下水道システムにおいて、各排水槽に設置された排水ポンプの運転状況を調査することにより得られた知見を以下に示す。

1) 圧送式下水道の運転状況

排水ポンプの最大同時運転台数と、その時間帯のポンプ稼働率の平均値には比例関係が見られ、同時運転台数の検討には、時間帯別のポンプ稼働率を把握することが重要である。

2) 各建物の排水負荷

ホテル客室からの排水は、施設営業終了直後の短時間に集中する傾向が見られる。
公衆便所系統の排水量は、天候や開催イベント内容により大きく変化する。

今後は、今回の排水負荷予測が現段階で排水槽に流入する排水系統が特定できた一部の排水槽のみを対象としているため、さらに継続して排水槽に流入する排水系統を特定するための調査を行い、建物用途による排水負荷特性を明確にし、ホテル・アミューズメント・飲食物販店舗などが混在した地域施設に対する設計用データとして活用できる資料として纏めたいと考えている。

参考文献

1)柏谷 衛:圧力式下水道システム,鹿島出版社,(1988)
2)宇土顕彦:圧力式下水道システムのシミュレーション技法,下水道協会誌論文集,(1991)
3)定永哲雄・斎藤恵司・紀谷文樹:地域における給水と排水の関連性を考慮した給排水負荷の予測に関する研究(その1)給水・排水の負荷変動特性の把握,日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),(1996-9),pp.441〜442
4)竹田、中村、井手、稲田:「循環型水利用システムにおけるポンプ稼働状況と排水量に関する分析 圧送式排水システムでの調査・解析結果」空気調和・衛生工学会学術講演会講演論文集2000年9月


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