『新クリーンルームの運転・管理・清浄化ハンドブック』(NTS社発行)掲載

モジュラークリーンルーム

平成5年10月
須賀工業株式会社
技術研究所


◆プレハブ式クリーンルーム

プレハブ式クリーンルームは、ゼネコン・サブコン・エンジニアリング会社・機器メーカーなどから既に数多くの製品が発売されています。 これら各社の製品にはそれぞれに特色があり、プレハブ式クリーンルームをひとことで定義するのは難しい面があります。

しかし、あえて最大公約数的な定義を考えれば、

@建築部材と設備部材を規格化してクリーンルーム全体をモジュール構造とする事により、
A部材点数を減らして生産性を上げる一方、部材性能の向上と組合せの工夫により多様な要求に対する柔軟性を維持するように考えられたもの、

という事ができます。

モジュラークリーンルームは当社が開発したプレハブ式クリーンルームです。 以下、モジュラークリーンルームを例にプレハブ式クリーンルームの特徴を述べます。

モジュラークリーンルーム概要
図-1 モジュラークリーンルーム概要

上記の定義で理解される様に、プレハブ式クリーンルームの技術的要点は建築部材と設備部材のモジュール化にあります。 ここで建築部材と設備部材の概要を述べます。

まず建築部材として重要なものは天井や壁を形作るパネルです。 パネルは芯材(不燃性能の違いにより硬質ポリウレタンフォーム、石綿石炭カルシウム発泡体、黒よう石発泡体など)を金属表面材(主に耐薬品性の違いによりカラー鋼板、ステンレス鋼板、ラミネート鋼板など)でサンドイッチ状にしたものです。

パネルを基本部材として接合部材や支持部材、窓、扉などの建具類などがシステム化されています。

パネル
図-2 パネル

次に設備部材として重要なものは塵埃を除去する清浄化ユニットです。 HEPA又はULPAフィルター、吹出口、ケーシングをまとめたものが最もシンプルなもので、さらにファンを含むものや温調用のコイルや加湿器を含むものなどがあります。

気流方式は通常、非一方向流型ですが吹出口下部に垂れ幕を設置したり清浄化ユニットを集中配置する事により部分的に一方向流型を実現するものもあります。 また非一方向流型のものも多くは吹出口形状を工夫する事により気流性状の向上をはかっています。

この清浄化ユニットを基本部材としてファン、温調装置、吸込口、差圧調整ダンパー、エアシャワー、パスボックスなどがシステム化されています。

清浄化ユニット
図-3 清浄化ユニット

さて、部材点数を減らす事と、多様な要求に対する柔軟性を維持する事とは本来互いに相反する事項です。 この相反する事項を全ての条件において満足する解は当然の事として存在しません。 したがって、各社のシステムはそれぞれに、ある特定のターゲットを定め、その使用条件下で最適な解となる様考えられたものです。 プレハブ式クリーンルームにあっては、この使用条件が重要であり、ここに各社の違いが生まれてきます。

したがってユーザーは、使用条件すなわち用途、規模、清浄度などに応じて価格やメンテナンスの面から最適なプレハブ式クリーンルームを選択すれば良い、ということになります。

◆モジュラークリーンルームとその特徴

モジュラークリーンルームは、昭和61年に当社が開発した、JISクラス6〜8(FS CLASS1000〜100000)対応の非一方向流型クリーンルームシステムです。 『CLEAN SPACE FOR MULTI-USE』をターゲットとし、生産ラインや実験環境のクリーン化、清浄品の保管等に手軽に使用できるクリーンルームとなる様、以下の特徴を持っています。

@設置が簡単
プレハブ部材とユニット化された機器を組立る方式なので、電源とスペースさえあれば、どこにでも設置できます。
A低コスト
システムの合理化を徹底することにより高品質、低価格を実現しました。
B短期間に設置
標準化された施工法により10坪程度の規模のものでは約1週間で完成しますので、生産ラインの停止期間を短縮できます。
C巾広いニーズに対応
豊富なシステムの組合せによって種々の御要望に応じることができます。標準仕様の他、特殊仕様として、恒温恒湿室、低温室、不燃・準不燃化、局所高清浄化、高耐薬品性化等にも対応できます。
D増設、移設、変更が容易
単位モジュールで構成されていますので生産ラインの増設、変更への対応や清浄度アップの為の改造が容易にできます。又、移設も可能で経済的です。
Eランニングコストを低減
実証実験による小風量化、気流分布の適正化によりファン動力を低減し、従来に比べて大幅な省エネルギーが可能になりました。
Fスペースを有効に
空調装置はすべて天井上に設置可能で、特別な機械室スペースは不要です。パネル類の支持は天井スラブあるいは梁からの吊りによる他、自立型とすることも可能です。

さらに平成3年にはモジュール化をさらに進めたパネル一体式のクリーンユニット(特許出願中)を開発しました。 これは天井パネル上に主要な設備機器(ファン、フィルター、吹出口、吸込口、照明器具、コンセントなど)を一体に備えたもので、これにより設計施工メンテナンスでの大幅な省力化が可能となりました。

パネル一体式クリーンユニット
写真-1 パネル一体式クリーンユニット

◆モジュラークリーンルームの性能

一般にクリーンルームの計画においては、設置コスト及び運転コストを低減するために、要求される清浄さをいかに少ない風量で実現するかが重要な課題となります。 非一方向流型クリーンルームの場合にはこの要求される清浄さの目安として、運転開始後に清浄度が要求値に達するまでの立上がり特性や、室内で発塵がある時の塵埃の拡散特性が重要とされます。 これらの特性は、室内気流の性状によってほぼ決定される為、吹出し風量の他に、部屋の形状や吹出口、吸込口の形態及び配置等の因子によっても影響を受けます。 したがって、吹出し風量を低減するためには、単に風量だけでなく、これらの因子の総合的な影響を定量化し比較検討しながらその限界を決定していく必要があります。

本システムの標準仕様を決定するにあたっては、実寸法のクリーンルーム(巾2.7m×奥行5.4m×高さ2.5m)を設置し、いくつかの器具配置について吹出し風量を変えて、清浄度立上がり特性や塵埃拡散特性を測定する実験を行なっています。

実験用クリーンルーム
写真-2 実験用クリーンルーム

(1)立上がり特性

非一方向流型クリーンルームは、供給される清浄空気の希釈作用によって清浄化されます。今、次図の様なモデルを考えると、立上がり時の室内塵埃濃度の理論式として次式が得られます。 (簡単の為、内部発塵なし、フィルター補集効率=100%、吹出し空気は室内に瞬時一様拡散する、とします。)

非一方向流型クリーンルームのモデル
図-4 非一方向流型クリーンルームのモデル

C=Co×e-Nt
C:t時間後の塵埃濃度[個/ft3]
Co:初期塵埃濃度[個/ft3]
N:換気回数(風量/室容積)[回/時]
t:運転開始後の時間[時]

式-1 塵埃濃度式

ここに、濃度Cと時間tを片対数グラフ上に表わすと、例えば次図のイの様な傾き(減衰率)を持つ直線になります(換気回数44回/時)。 理論式は、吹出し空気の瞬時一様拡散という理想的な気流状態を表わすため、現実の測定値をこれと比較すれば、実際の気流状態が理想状態にどの程度近いかを判断する1つの尺度になります。 実際の傾きは一般に、理論値の0.6倍程度(次図のロ)と言われますが、実験の結果はこれをやや上回る値(次図のハ及び次次図)を得ています。

清浄度立上がり
図-5 清浄度立上がり

各点の減衰率の理論値に対する比率
図-6 各点の減衰率の理論値に対する比率

(2)塵埃拡散特性

塵埃の拡散特性を見るには、室内で塵埃を与え、定常状態での室内各点の濃度を測定します。 発塵源は室内の作業者を考え、2名の作業者が防塵服を着用し、着座状態で両下腕の曲げ伸し運動を行なうものとしました。 実験の結果は、作業者から発生した塵埃がその周辺で高濃度になる事なく、吸込口の方向にむけて運ばれている様子が見られます。

各点の塵埃濃度分布
図-7 各点の塵埃濃度分布

◆モジュラークリーンルームの周辺技術

モジュラークリーンルームシステムを周辺からサポートする為、次の様な開発も行なっています。

(1)パネル組立式層流(一方向流)型クリーンルーム

プレハブ式クリーンルームの特徴はそのままに、クラス5(CLASS100)以上の高清浄度を容易に実現できます。

プレハブ式一方向流型クリーンルーム
写真-3 プレハブ式一方向流型クリーンルーム

(2)クリーンブース

局所高清浄化、物品保管用の簡易清浄室として利用できます。軽量化と、全高の低減化(ブース内有効高さ+200mm)を図って室内への設置も容易です。

クリーンブース
写真-4 クリーンブース

(3)モニタリングシステム

パソコンを用いた集中監視システムです。通信ネットを利用して遠隔地へのデータ転送もでき、管理負担を軽減できます。

モニタリングシステム
写真-5 モニタリングシステム

(4)超純水供給装置(商品名PURESTA)

オンサイトで利用できる小型の超純水供給装置です。水質レベルは256kbit対応。医療用水としても使用できます。またバルブ切換えによりRO水(1次純水)も使用できます。

超純水供給装置
写真-6 超純水供給装置


引用文献

パネルクリーンシステムカタログ/日本軽金属(株)


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