給排水衛生設備技術の変遷と今後の展望

(注)本文は、平成8年10月に作成され、雑誌『空衛』に掲載されたものです。

平成9年4月
須賀工業株式会社
技術部 坂本勲


はじめに
1.給水設備
2.給湯設備
3.排水通気設備
4.衛生器具
5.排水再利用設備
6.上質水供給設備
おわりに
参考文献


はじめに:

 給排水衛生設備は、一般に地味であり技術の変化が少ないように誤解されがちであるが、人の日常生活と密接な関係をもち、建物内の衛生的で安全な環境を保つ上で重要な設備として、その時代時代の社会的要求を的確に取り入れ、多様化して現在に至っている。
 本稿では、建築設備の成長期にあたる昭和30年代から、安定期に至った現在までの技術変遷の幾つかをとりあげ概観を試みる。

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1.給水設備

(1)受水槽

 従来、我国の水道は、小規模な2階建迄の建物への直結給水を想定して整備が進められてきたため、配水管の最小動圧も1.5kgf/cu程度とかなり低い水圧で推移してきた。昭和30年代の本格的成長時代に入り、3階建てを超える中高層建物や多量に水を使用する施設が出現すると、水圧も水量も不足し、付近の配水圧に影響を与えないよう受水槽を設けて給水する方法を取らざるを得なくなる。
 昭和32年水道法が制定され、その中で給水装置が法的に定義され、また、施行令で給水装置(水道引き込み管)とポンプの直結を制限されたことにより、ビルの給水方式の基本として受水槽方式が定着する。また、受水槽以降の設備は、水道行政から切り離され、建物側の給水設備と水道側の給水装置(引き込み管)として、住み分ける形をとり今日に至っている。
 受水槽は一般に地下最下階の床下二重スラブの空間を利用することが行われたため、その構造から衛生上の問題が潜在していた。
 昭和40年代に入ると、床下受水槽の衛生上の問題が様々指摘され社会問題化する。即ちクラックからの汚水の侵入、建設廃材の残留、清掃の不実施、汚泥の沈殿、マンホールの不備等々である。建設省はこれを受け、昭和50年建設省告示第1597号によって給水タンク等の床上設置及び六面点検を義務付けた。これにより受水槽の衛生面の確保が大きく改善されることになる。
 一方、厚生省は昭和45年「ビル管理法」により特定建築物の受水槽等の管理を義務付けたが、さらに、対象外の受水槽の清掃の不備や、衛生上の観点から、昭和52年水道法を改正し20m3を超える受水槽以降の給水系統の維持管理を簡易専用水道として規制し、さらに、61年からは、10m3超まで規制の範囲を改め、現在に至っている。

(2)給水方式

 1)高置水槽方式
 ビル用給水方式として、我国では、最も一般的な方式である。
 当初、水槽は鋼板製内部亜鉛溶射、または、エポキシ樹脂コーティング仕上げなどが多かったが、昭和30年代後半になるとFRP製水槽が登場し、鋼板製に替わり急速に普及していく。また、昭和50年建設省告示第1597号により、従来の地下受水槽に替わりFRP製パネル水槽が、この分野の主流になった。
 現在、FRP製のほかに鉄パネル、ステンレスパネル等の製品がある。
 昭和53年に発生した、宮城沖地震を契機に、昭和55年建築基準法施行令が一部改正され、耐震基準が厳しくなり、以降水槽は耐震構造型となったが、今回の阪神大震災においても、高置水槽及びその周辺に大きな被害が集中して発生しており、水槽の強度、設置法などについて、基本的な見直しが必要と思われる。

 2)圧力水槽方式
 この方式は、主として高置水槽が設置しにくい地下街、体育施設或いは広大な敷地に点在する工場等の給水に採用される。昭和30年代に自動空気補給装置が開発され普及していく。昭和39年の東京オリンピックの施設等で相当大がかりな圧力水槽を採用した例があるが、現在この方式は、給水圧力に変動がでたり水槽の容量が大きくなることから、中小規模建物の給水や、部分的な補助システムとして採用される例が多い。

 3)ポンプ直送方式
 受水槽の水を給水ポンプにより建物内の必要箇所に直接送る方式で、定速ポンプによる台数制御と、ポンプの回転数を変化させてポンプの容量を制御するポンプ容量制御方式がある。一般に圧力検知方式が採用されるが、吐出し圧力一定制御及び末端圧力推定制御がある。
 ポンプ直送方式は、昭和40年に住宅公団団地で始めて採用され、50年代に定着し、最近はインバータを採用したコンパクトなユニットが開発され、集合住宅を中心に屋上水槽方式に替わる給水方式になりつつある。

(3)ゾーニング

 給水圧力の上限は、ホテルや住宅では2〜3kgf/cu、事務所や工場では3〜5kgf/cuが標準とされ、超高層建物の給水・給湯系統の適正圧を確保するための、減圧弁や中間水槽によるゾーニン技術が、昭和30年代後半から40年代に確立し、実施された。

(4)配管材料

 昭和30年前半頃までは、亜鉛めっき鋼管が、ほぼ万能の管材として広く使用されてきたが、その後、水質の悪化に伴い、腐食による赤水、錆こぶによる管閉塞、漏水などのトラブルが続出し給水管として不適当な材料となり、使用されなくなってきた。この様な状況に対処するため、各種の耐食性管材や継手の開発が進められ、現在、屋内配管用としては、次のような材料が主として採用されている。

 ライニング鋼管は、赤錆対策のエースとして亜鉛めっき鋼管に替わって登場し、昭和35年頃、赤水問題が多発していた関西地区の公団住宅から試用が開始され、徐々に普及していった。
 昭和47年JWWA規格が制定され、昭和52年建設省仕様に記載されたことを契機に需要が本格化した。現在、水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管、水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管のほか、最近は給湯用として、耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管も採用されるに至っている。
 ライニング鋼管用継手の無かった時代を経て、樹脂コーティング継手が採用された後でも、管端部の処理に弱点があり、管端部の隙間腐食や青銅バルブとの異種金属接続によるマクロセル腐食がトラブルとなり問題化した。
 最近、管端防食継手が各メーカーにより開発され、管端部・ねじ部とも水に接しないコア入り機構が採用されるようになり、上述のような腐食トラブルは解消される方向に進んでいるが、ねじの加工精度や、ねじ込みトルク等の施工管理が重要であり、これを怠ると、また新たな腐食トラブルを引き起こす恐れがある。

(5)直結給水範囲の拡大

平成3年厚生省は「21世紀に向けた水道整備の長期目標」を策定し、その中の具体的テーマの一つとして、直結給水対象の拡大を取り上げており高圧給配水システムの採用により、小規模受水槽による衛生上の問題を無くし、給水サービスの向上を計るため3階〜5階までの直結給水を進める、としている。
 即ち、従来、我国の水道は2階建て迄の直結給水を確保するため標準最小動水圧を1.5〜2.0kgf/cuとして施設の整備が進められてきたが、今後、高圧給配水システムを採用し、最小動水圧を3.0〜3.5kgf/cu以上として3階〜5階、或いは、それ以上の高層階まで直結給水とし、また、動水圧が不足する場合の一つの対応として、水道直結ポンプによる増圧を認めるというものである。
 これらの背景の一つは、昭和62年建築基準法の一部改正により木造3階建ての建築が認められたことであり、もう一つは、簡易専用水道の規制対象外の、約50万台にも及ぶ10m3以下の小規模受水槽の衛生上の問題である。
 この様な情勢をうけ、最近、各地の水道事業体では、3階〜5階迄等の直結給水範囲の拡大を検討しており、既に36%で実施済みとされる。
 水道直結増圧ポンプによる給水方式は、平成4年横須賀市で認可されたのを始めとし、平成7年大阪市、続いて東京都で認可された。本方式は現在のところ、水道管に直結した給水装置として扱われ、その設計・施工とも水道事業体の規制下に置かれることになる。
 解決しなくてはならない問題が、多々あるが水道直結増圧ポンプ方式は、衛生面、省エネルギー面、省スペース面から優れており、近い将来、中高層ビル用給水方式の主流になるものと思われる。
 建築設備サイドとしては、長年採用してきた受水槽を中心とする給水システムが、大きく変化するわけであり、技術面ばかりでなく、規制面、営業面、社会制度面についても、その動向に十分留意し対応する必要がある。

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2.給湯設備

(1)燃料・エネルギー

 給湯設備に使用される燃料・エネルギーは、その時々のエネルギー事情や政策により目まぐるしく変化し、それに伴い熱源機器も替わっていく。
 ボイラの燃料として、当初石炭が用いられたが昭和35年に重油ボイラの規制が解除されB重油が使用されるようになる。しかし、硫黄酸化物等による大気汚染が進み、昭和44年東京都公害防止条例によりB重油は禁止され灯油に替わる。更に、昭和40年代末頃より東京ガスの天然ガス転換を機に、ガス焚に切り替えるケースが多くなっていった。

(2)加熱方式

 昭和30年代当初、病院、ホテル、大型建物等では、暖房、空調その他の目的に蒸気ボイラを設置しているケースが多く、蒸気が容易に得られるので中央式給湯設備の加熱方式としては、蒸気加熱コイル付きの貯湯槽による間接加熱、蒸気を使用していない事務所等では、貯湯式ボイラによる直接加熱が標準であった。
 現在も、蒸気を得られる建物では、蒸気加熱コイル付きの貯湯槽が使用されているが、蒸気を得られない建物では、貯湯式ボイラに替わり法規上ボイラに該当せず、取扱い資格者や、設置届けが不要な、真空式温水器、或いは、大気圧式温水器とコイル無し貯湯槽の組み合わせが、昭和50年代中頃から採用されてきている。
 最近、間接加熱方式の熱源として蒸気ボイラによるものの他、コージェネレイションシステム、地域冷暖房プラントからの蒸気、温水なども利用されている。
 住宅で給湯が本格的に普及し始めたのは、昭和40年代に入ってからである。現在、集合住宅では追い焚機能付きガス給湯機、または、深夜電力利用密閉型電気温水器が多く採用されている。
 事務所等の湯沸室では、従来、ガス焚の開放式貯湯式湯沸器が使用されてきたが、現在、換気の問題や安全性から電気式に移行しつつある。

(3)配管材料

 昭和30年代の末頃まで、一般の建物では給湯管の材料として、亜鉛めっき鋼管を用いていた。昭和40年代に入り銅管の使用が定着したが、孔食事故等が契機になり、給湯管材料も多様化の時代に入り、現在、次のような材料が採用されている。

1)銅管
 建築設備における銅管の本格的な大量採用は、昭和40年代に入ってからと考えて良く、セントラル給湯暖房システムの普及や、超高層ビルの幕開けを迎え、施工性、耐震性、耐久性、軽量性等から銅管の良さが評価され給水、給湯、冷温水のほか、排水にも採用され使用量が増加したが、大型ビルの循環式給湯配管を中心に、竣工後1〜2年で孔食による穴あき漏水事故が各所で続発し、その原因・対策が必ずしも明快でないため、現在まで問題を残している。

2)ステンレス鋼鋼管
  ステンレス鋼鋼管は、従来より化学工業や食品工業の施設配管用として多用されてきたが、建築設備配管用に本格的に採用され始めたのは昭和50年代に入ってからである。これは、水質の悪化に伴う給水管の赤水問題や、給湯用銅管の孔食によるトラブル頻発などにより、耐食耐久性に優れたステンレス鋼鋼管が注目され始めたこと、また、この要求に応えるように建築設備にフィットする様な薄肉のステンレス鋼鋼管及び省力型継手が開発されたことによる。更に、昭和51年、一般配管用ステンレス鋼鋼管の規格が制定され、昭和52年建設省仕様に記載されたことにより、急速に普及するようになり現在に至っている。
  ステンレス鋼鋼管の耐食性は、管表面に形成される保護皮膜(不動態皮膜)に依るものであり、この皮膜が破壊すると腐食が進行する。ステンレス鋼鋼管のトラブルとしては、省力型継手の施工法と施工管理技術のミスマッチによる引き抜け漏水事故が記憶に新しい。

3)架橋ポリエチレン管・ポリブテン管(軟質)
 昭和60年代の当初より、住都公団が中心になり集合住宅用給水・給湯配管システムとして開発採用を進めてきた、さや管ヘッダ工法用の配管材料として定着しつつあり、今後、一般ビル用の枝管配管用材料としての可能性が注目される。

(4)省エネルギー対応

 給湯設備は、大きくエネルギーを消費する設備であり、省エネルギーは、今後とも重要なテーマである。

1)給湯設備における省エネルギー基準
 エネルギーの使用に関する法律第14条、第1項の規定に基づく平成4年通産・建設省告示第2号に、床面積の合計が2000u以上のホテル、または、旅館及び病院、または、診療所における給湯設備のエネルギー消費量の建築主の判断基準が示されている。CEC/HWの値はホテルまたは旅館の場合で1.6以下、病院または診療所の場合で1.8以下となる様にするもの、とされており、配管、貯湯槽、熱交換器、循環ポンプ等からの熱損失を少なくして、エネルギー使用の合理化に努めなければならない。
 なお、CEC/HW(給湯エネルギー消費計数)とは、給湯設備が1年間に消費するエネルギーの熱量換算値(給湯負荷の他に配管、貯湯槽、ポンプ等からの熱損失を含む)を、同期間における仮想給湯負荷(給水温度を水道水の温度とした場合の、給湯負荷に必要な熱量)で除した値を言う。

2)太陽熱給湯システム
 太陽熱給湯システムは、昭和48年のオイルショック以降盛んに研究開発が進められ、昭和50年代中頃まで病院、ホテル、体育施設、プール等極めて大規模な施設を含めて数多く採用されたが、エネルギー事情の緩和とともに、あまり採用されなくなってきている。太陽熱給湯システムは、多岐にわたり開発された太陽熱利用技術のなかで、唯一実用化された分野であり、将来のエネルギー事情を勘案した場合、太陽光発電、ヒートポンプ、蓄熱技術等との組み合わせも含めて、積極的な取り組みを進めるべきであろう。

(5)レジオネラ属菌対策

 先般、新聞に掲載された病院に於いての、給湯が原因となったレジオネラ感染事故のニュースは、我々設備技術者に衝撃を与えた。空気調和・衛生工学会のワーキンググループが、近年実施した調査でも、温度の低い場合、中央式循環給湯方式の給湯システム内ではレジオネラ属菌が検出されており、どこの施設でも、感染事故が発生する可能性が潜在していると言えよう。
 今後、病院、老人施設、並びに、幼児施設等の給湯設備の設計・施工・管理に当たっては、次の点に留意する必要がある。
 レジオネラ属菌を抑制するためには、返湯管における湯の温度を、55℃以上に保持出来るように温度の設定管理をすることと、滞留水の防止が重要であり、管内を均等に循環させるための定流量弁等の採用、端末滞留水のフラッシング装置、やけど防止のための安全装置等が必要になる。
 また、レジオネラで汚染された給湯水が、エアロゾルになって使用者の呼吸器系に吸い込まれるのを防止するために、水栓やシャワーヘッドはエアロゾルの発生を抑制する泡沫式の器具を採用する。
 給湯システムに関し、今まで、我々設備技術者は、機器システムの改良や配管腐食防止と言った工学面については熱心に取り組んできたが、最も重要な「衛生学的に安全」な給湯水の供給について、いささか関心を疎かにしてきたきらいがあり、この点、反省を必要とする。

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3.排水通気設備

(1)排水通気方式

 昭和30年代には、排水通気方式は現在とほぼ同様なシステムを確立している。昭和33年下水道法が制定され、建物からの排水の種類と排出方法が明確にされた。当時、下水の処理区域外も多く、その場合は、建物内の排水を汚水と雑排水の2系統に分けて配管し、汚水は浄化槽で処理して排出した。
 通気方式は、集合住宅では伸頂通気、事務所ビル等ではループ通気、ホテル等では各個通気を主に採用したが、まだ和風大便器が多く設置していることも原因となり、「床下通気」になっているケースが多かった。

(2)超高層建物の排水立て管

 昭和30年代の中頃には終局流速について研究調査が進められ、排水の落下速度に限界があることが知られており、40年代の超高層建設に支障無く対応できた。

(3)配管材料

 従来、排水管の材料としては、汚水管は鉛管と排水鋳鉄管、雑排水管として亜鉛めっき鋼管とドレネージ継手の組み合わせが主流であったが、近年、建物の高層化、熟練工の不足などから可撓性、軽量性、簡易施工性が求められ、次のような材料が主に採用されている。

 排水用タールエポキシ塗装鋼管は、昭和50年代の中頃より、排水鋳鉄管の省力化代替品として、排水鋼管用可撓継手と共に採用されるようになり、最近では、更に汚水用配管材料の軽量化が進み、薄肉鋼管に塩ビライニングを施した、排水用塩化ビニルライニング鋼管が多用されている。

(4)単管排水システム

 当初、スイス等で開発され、昭和40年代中頃に導入された特殊排水継手による単管排水システムは、その後国内で独自に開発された幾つかのシステムも加わり、現在、集合住宅やホテルを中心に普及が進んでおり、省スペース性、施工性も優れていることから、今後、性能評価法が確立され設計・施工法が標準化されるこが期待される。
 通気弁は、スウェーデンで開発され、昭和62年と平成2年建設大臣認定を取得したもので、大気の吸い込みしか行わないので、屋外に通気管の開口を設ける必要がなく、集合住宅を中心に採用されている。

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4.衛生器具

 衛生器具の変遷については、洋風化、カラー化高級化等いろいろ切り口があるが、ここでは節水化を取り上げる。
 昭和48年は、オイルショックとともに渇水の年でもあった。また、この年建設省が発表した長期水需要見通しは、南関東地区などの将来の水不足を示唆しており、水も石油と同じ限りある資源であるとの認識をもたらし、節水器具の開発や排水再利用を推進するきっかけとなった。
 まず節水こまを用いた水栓で、無駄な水使用を無くすことから始まり、続いて、事務所や公共建物の中で水を大量に消費する便所の小便器洗浄用のハイタンクの節水化が進められた。浪費の最大の原因は、24時間連続して自動洗浄される点にあり、夜間の無人時間帯の給水を電磁弁で制御することから始まり、タイマー組込型、赤外線感知型など次々開発されていき、現在、使用頻度の少ない公共用や事務所便所等では、個別感知洗浄システムが主に採用されている。
 昭和40年代末から50年代中頃にかけ節水型大便器や節水型フラッシュ弁が開発された。節水型大便器では

いずれも従来型に比べて2〜3リットルの節水が可能である。

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5.排水再利用設備

(1)排水再利用設備

 排水再利用設備は、建物内で一旦使用された水―排水を適切に処理し、その処理水を、便所の洗浄水等に使用するものであり、その利用方式は規模により個別循環式、地域循環式、広域循環式の3方式に分類される。
 排水再利用設備は、昭和40年代中頃より採用が始められ、昭和50年代中頃より、国の排水再利用に関する施策や、地方自治体による指導により急激に増加し、現在、全国で約2000施設が稼働している。
 排水の再利用は、水道水の使用量を削減することにより、水不足地域の需給ギャップを直接緩和することと、建物からの排水量を減少させることにより下水道の負荷を軽減させる効果がある。
 排水再利用のための建設費、処理費が高く建物側の大きな負担になること、技術的に上質な処理水を得られても実際上、便所の洗浄水以外には使用出来ないなどのネックがあり、東京、福岡など特定地域の大規模建物以外にあまり普及していない。
 しかし、最近、全国的に渇水が日常化しており、雨水利用との併用なども含め、もっと強力に推進していく必要があろう。

(2)雨水利用設備

 都市部における雨水利用は、水の有効利用のほか、都市小河川での洪水対策、合流下水道への負荷軽減など都市施設的な意義がある。
 雨水利用の実施例は、昭和40年代中頃からあるが、昭和60年代に入り、教育施設や地区センターなど比較的小規模な公共建物で多く採用されるようになり、現在、全国で約500施設が稼働している。民間の大規模施設としては昭和60年竣工の両国国技館、昭和63年竣工の東京ドーム、平成5年竣工の福岡ドーム等がある。
 雨水は、排水再利用水に比し、水質が良好なため処理が簡単であり、用途も広く便所洗浄水のほかに、プール等の補給水、撒水、清掃水、消防用水などに利用されている。
 また、最近、災害時の非常用飲料水の原水としても関心を集めている。

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6.上質水供給設備

 近年、水道水源の富栄養化の進行に伴う水道水の異臭味や、トリハロメタン汚染問題等から、美味しくて安心できる水を求めるニーズが高まり、家庭用浄水器のブームや、ミネラルウォータボトルの使用量の急激な増加となって現れている。
 これらの動向を受けて、最近、建物内で美味しい水を製造し中央式で供給する、上質水供給のパイロットプラント的設備が出現し始めている。
 上質水製造装置は、基本的には高度水処理技術の組み合わせであり、活性炭吸着処理、膜処理、イオン交換処理、ミネラル添加、冷却等のいずれか単独、または、複数組み合わせで処理し、塩素を添加することにより構成されている。
 上質水の技術の延長上に、アルカリイオン水、酸性水、無菌水などの供給が考えられる。

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おわりに:

 ここ30年ほどの技術の変遷と、今後、早急に対応すべき幾つかのテーマを取り上げた。
 直結給水、レジオネラ属菌対策、給湯の省エネルギー、排水再利用等 業界が取り組まなければならない技術テーマは数多くある。
 技術への真面目な取り組みこそ、給排水衛生設備分野の新規市場の創設と、信頼性の向上をもたらすものであると確信する。

注記

  1. 空衛誌 VOL.49 1995 2号に、諸先輩が、終戦直後から昭和30年頃にかけての設備工事について詳しく述べられていますので、御一読願います。
  2. 設備技術史に興味をお持ちの方には、下記の図書の御一読をお薦めします。

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参考文献


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