「クリプトスポリジウム」を知っているか

平成9年1月
須賀工業株式会社
技術研究所 柳村暁

●クリプトスポリジウムによる汚染

クリプトスポリジウムとは原生動物(単細胞生物)の寄生性原虫に分類され、これによる感染例が日本でも報告されている。1994年夏、平塚市の雑居ビルの簡易水道水が原因で、461人が感染したのが最初で、本年6月には埼玉県越生町の町営水道水に混入し8千人以上が発症した。米国では1993年にミルウォーキーで40万人以上が感染したというから驚き。

主な症状は下痢、腹痛、発熱などで、健康であれば1〜2週間で自然治癒するが、免疫力が低下していると死にいたる例も少なくないという。

●その特性と予防方法

上水のクリプトスポリジウム汚染の指標としては大腸菌が有効であり(水道法の水質基準項目の中に「大腸菌群は検出されないこと」とある)、もし検出されれば同時にクリプトスポリジウム汚染の可能性が高いことになる。

ところで、クリプトスポリジウムは、塩素殺菌で死滅しないというから困ったものだ(大腸菌群は塩素殺菌で死滅)。しかも、クリプトスポリジウムのオーシスト(卵のようなもの)の大きさは4〜6μmなので、簡単なろ過装置(例えば家庭用の簡単な浄水器)では通り抜けてしまう。浄水場などに設置されている急速ろ過法、緩速ろ過法、膜ろ過法などの浄水処理は有効と言われているが、汚染されていればオーシストが蓄積されるのでその除去に注意しなければならない。

しかし、クリプトスポリジウムは加熱、冷却、乾燥に弱く、60℃以上または-20℃以下で30分間、または、常温の場合で1〜4日間乾燥状態におかれると、感染力を失う。飲料水の場合は、1分間沸騰させれば十分不活性化出来る

厚生省では越生町の集団発生を重く見て、浄水場での濁度を快適水質水準である0.1度以下に徹底することなどを盛り込んだ「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」(→福田光氏のHP)をまとめている。

●設備技術者としての関わり

一方、我々給排水衛生設備技術者としては、上水が汚水によって汚染されないような設備を常に考えておかなければならないのは当然ながら、大雨、洪水などの非常時に水道管がクリプトスポリジウムに汚染される可能性がある事を認識すべきである。

又、我々自身とその周辺の為に、特に排水処理施設(主に生物処理)並びに動物を扱う施設(実験動物施設、動物園、畜産事業所その中でも排水処理施設)の仕事に従事し排水を取り扱う場合は、

などしてクリプトスポリジウムの汚染に注意しなければならない。

●微生物の逆襲?

終わりに、最近「O157」とか「レジオネラ」とかで、人間の身近な生活環境が「細菌の逆襲」だけでなく「微生物の逆襲」に遭っているのが現実だ。どうなっていくのだろう・・・。

P.S.

厚生省に対策指針のことで問い合わせをしたところ、非常に丁寧に応対してくれて30ページもあるのにFAXしてくれるというが、それは断りもらいに行ったら厳重警戒中(折りも折り)で警察官に呼び止められ行き先を聞かれ身分証明書を提示しなければならなかった。ムムム。


参考資料

  1. 「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」厚生省
  2. 「新顔病原体の危機管理を」読売新聞夕刊1996/11/11
  3. 「飲料水の微生物学」技報堂出版
  4. 「水質衛生学」技報堂出版
  5. 「検査の為の寄生虫図鑑」(→国立感染症研究所、遠藤卓也氏のHP)
  6. 「細菌の逆襲」中公新書